知っておくと便利!アメリカ製造業界用語集
2019年8月19日アメリカの製造業界に携わっていると、業界特有の言葉がたくさん出てきます。
そんな業界特有の言葉のため、そのままカタカナ表記していることもあったりします。
実際、これらはどんな意図で使われている言葉なんでしょうか?
その意図を知っておくと理解できる言葉がいっぱいあるので、そんなアメリカ製造業界用語をいくつかピックアップしてご紹介します!
MOQとは?
見積もり表などにも良く表記されている「MOQ」。
これはアメリカ製造業界以外にも、広く世界の製造業で使われている用語もあります。
正確には「Minimum Order Quantity」の頭文字を取って略したものです。
日本語訳すると…
MOQ = 最低発注数量
つまり、「この数量を最低でも発注しないと生産ができない数」ということ。
よく、MOQを見積もり表に記述しているにも関わらず、「これより少ない数で発注できますか?」というお問い合わせを頂きます。
これは、MOQ = 「最低発注数量」なので、「最低」は「最低」のまま、いくらお問い合わせを頂いても変わらないんです。(汗)
これ以下の数量では生産できないから表記しているわけで、そんなお問い合わせを頂いても、正直、時間の無駄になってしまいます。
MOQについてお問い合わせされる際は、ぜひご理解の上、ご確認をお願いします。
セットアップチャージとは?
アメリカで製造をする際、一般的な初期費用として存在するのがこの「セットアップチャージ」です。
日本語に訳すと、「設定費用」もしくは「準備費用」になります。
意味合いとしては、版を準備するための作成費用だったり、機械を初期調整するための設定費用になります。
日本の感覚で言うなら…
セットアップチャージ = 版代等の初期費用
と解釈するのが理解しやすいかも知れません。
版代以外にも、様々な準備や設定費用のことをひっくるめて、「セットアップチャージ」と言います。
インクチェンジチャージとは?
「インクチェンジチャージ」は、1回の発注内に、異なるプリント色がある場合に発生する費用です。
これだと、ちょっと分かりづらいですよね。
日本語訳すると…
インクチェンジチャージ = インク交換費用
↑なので、その意味を理解すると、どんな時に発生する費用なのかがわかりやすいです。
例えば、1回の発注で、黒プリントと白プリントのものを依頼したとします。
それらのプリント作業中に黒インクから白インクへ色を変更する際、インクを交換する必要がありますよね?
そこで発生するのがこの「インクチェンジチャージ」なんです。
工業用の機械でインク色を変更する際、機械内に残ったインクや、版に付着したインクを一度洗浄しなくてはならなかったりします。
そういった手間賃がこの「インクチェンジチャージ」につながる、というわけです。
コピーチェンジチャージとは?
「コピーチェンジチャージ」は、上記のインクチェンジチャージと同じ解釈のものです。
日本語訳すると…
コピーチェンジチャージ = 版交換費用
↑となります。
1つの発注内に、異なる版(デザイン柄)が存在する場合にかかる費用のこと。
例えば、A柄とB柄というデザインがあったとします。
A柄を刷り終わったあと、B柄を刷る前に、使っている版を交換する作業が必要になります。
大きな工業機械では、重い金型の取り外し作業だったり、細かな位置調整をする必要があり、その版交換の手間賃がこの「コピーチェンジチャージ」に繋がる、というわけです。
バーチャルプルーフとは?
アメリカの製造業界ではごくごく一般的な「バーチャルプルーフ」。
日本語訳すると…
バーチャルプルーフ = 仮想校正
↑直訳するとこんな感じです。
それでも「仮想」ってなんぞや?と、ちょっと分かりづらいですよね。
近年では、仮想通貨や仮想現実など、「仮想」という言葉が多く使われている時代。
わかりやすく言い換えるのであれば、「仮想 = コンピューター上でイメージされたもの」です。
「仮想校正」にも同じで、言い換えれば…
仮想校正 = コンピューター上で作った仮想イメージ画像にて行う校正確認
↑という意味になります。
ここから先はちょっと脱線して、バーチャルプルーフの詳細についてご紹介したいと思います。
○バーチャルプルーフはこうして生まれた
一昔前、まだパソコンが普及していない頃の校正確認は、いちいち現物サンプルを製作して、その仕上がりを確認していました。
というのも、今のように全てデジタルでは無い時代だったため、電子メールもデジタルカメラも無く、実物写真を撮影してお客さんと校正確認するのも一苦労でした。
印刷技術も今より低かったため、実際に印刷してみないと、仕上がりのクオリティーがどれくらいのものか、わからない部分も多々ありました。
そのため、まずはサンプルを作成して、現物にて校正確認した方が、最短の手間で済んだからです。
ところが、FAXやパソコン、電子メール、デジタルカメラが普及してきてからは、一気に生産背景が進歩します。
印刷技術の向上に伴い、生産ごとの品質個体差もなくなり、パソコン上でデザインしたものが、そのまま印刷できるようになりました。
そうなってくると、実物サンプルでの校正確認が省かれるようになります。
そこで生まれたのが「バーチャルプルーフ」なんです。
コンピューターの画面上で、仕上がりイメージを確認でき、その画像は電子メール等で速やかに送信できる。
なんて便利な時代になったんでしょう!
バーチャルプルーフは今の時代に合った校正確認方法というわけです。
○実物サンプルを作りたがる日本人
先にも記述したように、「バーチャルプルーフ」とは、「コンピューター上で作った仮想イメージ画像にて行う校正確認」です。
実物サンプルをわざわざ作る手間も無く、コストと時間の両方を省くことが出来る最善の校正確認方法だったわけです。
印刷技術の向上により、パソコン画面で出ている画像通りにほぼ印刷されるため、この「バーチャルプルーフ」による校正確認が、アメリカの製造業界では当たり前となっています。
ところが、日本では中々この「バーチャルプルーフ」への認識が普及しておらず、「まずはサンプルを作って見てみたい!」という方が多いのが現状です。
日本人特有の心情として、たしかに理解は出来るのですが、ここらへんは文化の違いでもあるかも知れません。
特に、お皿1枚を購入する際、ほとんどの人種の方はお皿の外見をパッと見て購入を決断しますが、日本人は皿の裏まで良く見てから購入する、という都市伝説のような話があるくらいです。
正直なところ、実物サンプルを作ったところで、実物とバーチャルプルーフでは大差ありません。
「パソコン画面上で確認できるものに、わざわざ高いサンプルコストと、高い取り寄せ送料、そしてそれなりの時間をかけてまで、本当に実物サンプルを作る必要があるのか?」
欧米ではこのような思想が背景にあるため、あまり実物サンプルを作る習慣がありません。
クオリティーを誰よりも心配する日本人としては、なかなか浸透しない部分かも知れませんが、アメリカ製商材を取り扱って行くのであれば、受け入れなければならない部分でもあります。
ちょっと脱線してしまいましたが、バーチャルプルーフの合理性を理解出来れば、結果的に生産コストを抑えたり、生産時間を短縮することに繋がるかと思います。
まとめ
- MOQ = 最低発注数量
- セットアップチャージ = 版代等の初期費用
- インクチェンジチャージ = インク交換費用
- コピーチェンジチャージ = 版交換費用
- バーチャルプルーフ = 仮想イメージ画像にて行う校正確認
いかがでしたでしょうか?
他にもいろんな業界用語というものは存在しますが、だいたい見積もり金額等で出てくるワードは上記のものが多いです。
アメリカやヨーロッパ等の製造業界でしか使っていないようなワードかも知れませんが、海外生産に携わっていらっしゃる方であれば、きっとお役に立つのではないかと思っております。
ぜひ何かの参考にしてみてくださいね!